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EOLを乗り越える リフト&シフト(2)

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「Solaris SPARCをリフトする」

それでは SPARC Solaris のシステムもクラウド化はできないのでしょうか?
マイグレーションはできるのでしょうか?
OS チェンジの可能性はあるのでしょうか?

SPARC Solaris もリフト&シフトが可能です。
まずはクラウドへ移設 ( リフト ) し、その後、順にシステムをシフト、つまりモダナイゼーション ( コンテナ化、マイクロサービス化など ) することが可能なのです。

 SPARC の IaaS クラウドは国内に少数ですが存在します。
Solaris SPARC のシステムも、通常の IA サーバと同じようにP2V( 物理から仮想 )、V2V( 仮想から仮想 ) での移設が可能です。
この手段は Solaris の開発元でもある Oracle 自体が用意した標準機能で実現することが可能です。
Solaris には元来コンテナ機能「Zone」があり、多くのシステムでこれを利用していますが、Zone を含んだ形でも P2V や V2V でクラウドへ移設することができます。

 移設には、Solaris 10 と Solaris 11 で仕様が異なり、Solaris 10 は Flash Archive、Solaris 11.2 以降は Unified Archive という機能を利用します。
どちらも既存システムでアーカイブを作成し、SPARC の IaaS クラウド基盤にアーカイブを持ち込み展開することで移設ができ、最新の SPARC 環境で動作するようになります。

 Solaris 10 では Flash Archive 作成時、シングルユーザモードにする必要があるため、ダウンタイムを設ける必要があります。
移設後は最終版の Solaris 10 1/13 に自動的にアップデートされるため、クラウドへの移設と同時にアップデートテストをする企業も多いです。
Solaris SPARC の場合、バイナリ互換が保たれているため、特定の古いオープンソースのミドルウェアに過度に依存するシステムでない場合は、OS がアップデートされても概ねシンプルに移設ができることが多いのが特徴です。

 Solaris 11 であるならば、可動中でも Unified Archive を作ることができ ( 作る瞬間以降、新たに作成・更新されたデータの移設は別の手段を用いる必要がありますが )、OS のバージョンをそのまま、IaaS クラウド基盤に移設することができます。

 SPARC システムのハードウェア老朽化やライセンス保守サイクルの管理が不要になり、高価なSPARC システムの予算付けや SI 費の節約、経費的にも CAPEX( 資産価値への投資 ) から OPEX( 事業運営のための投資 )へ変化することができるでしょう。
 また、特殊なSPARC ハードウェアのエンジニアリングからも解放されます。
移設された Solarisの仮想インスタンスは、Linux と同じように ssh でログインでき、普通にシェルを使う事ができるので、クラウド化することで Linux 経験のあるエンジニアならば少しの知識の習得で管理ができるようになるはずです。
もしも Solaris で作られたシステムがブラックボックス化しているのであれば、このことは解読の大きな手助けになるのではないでしょうか。

「テラクラウドの Solaris SPARC Private Cloud」

テラクラウドの Solaris SPARC Private Cloud は、仮想化基盤は Oracle VM for SPARC を用いています。
これはLDOM(Logical Domain) と言われるハイパバイザ技術を用いており、IA アーキテクチャの仮想化とは異なるものです。

IAのクラウドサービスと異なり、CPU、メモリ等のリソースをパーティショニング ( 分割 ) するため、分割されたリソースは専有することができます。
そのことで他の収容インスタンスの影響を受けにくくなります。
一般的に、クラウドでは収容ホストによって速かったり遅かったりしますが、LDOM では構造的にそういうことはおきなません。
また、LDOM の中でも Zone の作成を好きなだけ行う事ができるため、いままで Zone を使いこなしていた Solaris ユーザにとっても、リソース計算がしやすいメリットがあります。

「Solaris SPARC のシフト(モダナイゼーション)」

 Solaris SPARC の「リフト」は可能だとしても、シフト、つまりモダナイゼーションは可能でしょうか?

 実は Solaris 10 には、2025 年の崖より先に解決すべき 2024 年問題があります。
Solaris 10 の Extended Support Endsが 2024 年 1 月で終わりを迎えます。
すでに Premier Support Ends は 2018 年 1 月で終えており、現在は拡張サポートに入ったハードウェアにしか修正パッチの配布がされていない状況です。

Solaris SPARC に対応したクラウドにリフトしたとしても、2024 年の 1 月で OS 的にサポートエンドを迎えてしまうことになります。
セキュリティホールがでなければそのまま利用し続ける事はできますが、そのままにしておくことは問題となるでしょう。

 後継は Solaris 11 であり、現状のバージョンは Solaris 11.4 です。
11.4 以降は、最近のモダンなアップデート方針である継続リリース型になったので、月次の SRU を継続的にアップデートするか、四半期に一度の CPU(Critical Patch Unit)を反映していけば、最新の OS になっていきます。
また、11.4 は現時点で「2034 年 11 月までが Extended Support Ends」となっている OS で、世の中でリリースされている OS の中では、ライフサイクルが最も長いレベルの OS といえます。